若手弁護士の情報法ブログ

某都市圏で開業している若手弁護士が日々の業務やニュースで感じたこと、業務において役に立つ書籍の紹介等を記していきます。情報法・パーソナルデータ関係の投稿が多いです。

【書籍紹介】「業種別 法務デュー・ディリジェンス実務ハンドブック」

 

業種別 法務デュー・ディリジェンス実務ハンドブック

業種別 法務デュー・ディリジェンス実務ハンドブック

 

タイトル通り、デューディリジェンスをするにあたり業種ごとにチェックすべきポイントや留意点を解説しています。

本書で取り上げられている業種は以下の通り。

 

製造業/小売業/物流業/システム開発業/Eコマース事業/製薬業・医療機器製造業 /介護事業/旅行業/ホテル・旅館業/飲食業/労働者派遣事業/農業法人

 

まず法務デューディリジェンスの概要から始まり、どの業種にも共通する調査項目を取り上げた上で、業種ごとに特にチェックすべき法令上の項目を解説するという構成になっています。

 

M&Aデューディリジェンスする際だけではなく、顧問先・新しくクライアントとなった企業の業界における法制度をざっとチェックする上でも大変便利です。

 

【書籍紹介】谷口学「会計参謀」:生きた会計を学ぶことができる良書

谷口学「会計参謀‐会計を戦略的に活用する‐」

会計参謀-会計を戦略に活用する-

会計参謀-会計を戦略に活用する-

 

 

仕事の上で決算書を見る機会は多く、会計に関する知識を備えておくことは必須です。色々と本を読みある程度の知識は得たつもりですが、決算書に記載されている会計指標が実際どのような意味を持つのか、十分なイメージを持つことがなかなかできませんでした。

本書は、 公認会計士である著者が、会計というツールを使って企業経営にどのように生かしていくのかを解説している本です。

本書の特徴は、会計指標や数値の細かい説明に終始するのではなく、事業ポートフォリオ戦略、M&Aにおける企業価値評価、予算管理、投資等の意思決定といった、企業経営をする上で問題となる様々な場面において会計がどのように役立つかという、「生きた会計」を示してくれている点です。

 

会計というと、どうしても細かい指標や専門的な用語をイメージしがちで、苦手意識がありました。しかし、本書を読んだことで、会計というものの位置づけ、経営戦略とのかかわりについてかなり具体的なイメージを持つことができました。

比喩を用いた説明が巧みで、どんどん読み進めていくことができます。例えば、以下の一文は非常に分かり易かったです。

 

会計数値とは、船の航行に例えれば、進む方向を指し示す羅針盤であり、風速計であり、燃料計である。さまざまな計器が情報をコックピットに映し出し、航行の目的に合った最善手を打つ判断根拠となる(「はじめに」より)。 

 

また、事業評価指標のところでは、①売上高(高度成長期においては絶対金額としての売上が重視された)→②売上高利益率(事業の規模ではなくビジネスモデルやコスト構造を検証し事業の利益率を評価する必要が生じた)→③総資本利益率(直接金融の拡大により、投資効率が重視されるようになった)→④株主資本利益率(株主の立場から、総資産ではなく株主が拠出した株主資本がどのくらい有効に運用されているかを評価する必要が生じた)というように、時代の流れによって重視すべき評価指標が変化していった過程を分かり易く解説しています。これまで、これらの評価指標の関係性はよく理解できていませんでしたが、この説明によってはっきりとイメージできるようになりました。

 

本書を読んだことで、改めて会計の奥深さと面白さを知ることができました。会計について基本的な知識はあるものの、苦手意識があるという方は是非一読をしていただきたい良書です。

【書籍紹介】「申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。」:人間中心主義の大事さ

  

申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。

申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。

 

 

豊富な経験を持つコンサルタントが、コンサルがクライアントに提供するサービスやツールの問題点を詳細に解説し、痛烈に批判します。

 

社員をA〜Cにランク付けしたり、社員の業績を評価して給与に反映させるシステム等は、多大な事務処理上の負担が増すだけで会社にとってプラスにはならないと主張します。

 

筆者の一貫したメッセージは、美しいフレームワークやツールにこだわるのではなく、現場を重視して社員と十分なコミュニケーションをとり、全社で情報共有をしていくことの大事さです。数字やツールではなく、いわば「人間中心主義」とでもいうべきでしょうか。

企業は、感情を持ち不合理な行動をする人間の集まりである以上、その人間への深い理解がなければどんな対策をとっても意味がないと。

 

AIの発達、データ至上主義が幅を利かせがちな昨今の風潮の中、改めて人間ができることは何かを考えさせられる良い本です。

弁護士の経営戦略を考える上で参考になる書籍

 大野潔「企業法務に携わる弁護士が最初に読む本」

 

競争社会到来! 企業法務に携わる弁護士が最初に読む本

競争社会到来! 企業法務に携わる弁護士が最初に読む本

 

 法務部の経験があるコンサルタントが、ご自身の経験から、弁護士業界の非常識、改善すべき点をまとめている本。ページ数は少なくさくさくと読めます。受け身で待つのではなく積極的にこちらから出向く、長い文章の場合は最初に結論を出す等のアドバイスは参考になりました。

 

 

 

柿沼太一「事務所経営が変わる!具体的手法から学ぶ法律事務所のマーケティング&マネジメント」

 

事務所経営が変わる!具体的手法から学ぶ法律事務所のマーケティング&マネジメント

事務所経営が変わる!具体的手法から学ぶ法律事務所のマーケティング&マネジメント

 

 中小企業企業診断士の資格を持つ弁護士が執筆したものです。経営戦略の理論を踏まえ、それを法律事務所経営の場面に活用するための具体的な手法を解説しています。受任ルート等のデータをまとめておく、顧客にアンケートをとる等、取り組みやすいツールを丁寧に、わかりやすく説明してくれており大いに勉強になりました。

 

 

北周士「弁護士『好きな仕事×経営』のすすめ」

 

 

 

 ノースライム先生こと北周士先生が編集代表となり、様々な分野で活躍する比較的若手の弁護士の経営スタイルや仕事の仕方を紹介している本です。各弁護士の専門分野はデータ保護、インターネット、学校問題、福祉、芸能等、実に多種多様で弁護士資格の持つ可能性に改めて気づかされました。

 

 「選ばれるプロフェッショナル」

 

選ばれるプロフェッショナル ― クライアントが本当に求めていること

選ばれるプロフェッショナル ― クライアントが本当に求めていること

 

 専門性の高いプロフェッショナルを超えて、より高い次元でクライアントと向き合うアドバイザーという概念を立て、アドバイザーとしての姿勢や取り組み方を解説しています。クライアントがふとした雑談の中で出した疑問を逃さず徹底的に考えてクライアントに提示するといった方法は参考になりました。

 

 栢野克己竹田陽一「小さな会社の稼ぐ技術」

小さな会社の稼ぐ技術

小さな会社の稼ぐ技術

 

 資金も人材も豊富な大企業ではなく、小規模零細企業という「弱者」がとるべき戦略を豊富な事例をもとに紹介しています。手書きのメッセージを添えるといった地道で手間がかかる方法が有効であることを気づかされました。

 

 

 和仁達也「年間報酬3000万円超えが10年続くコンサルタントの教科書」

年間報酬3000万円超えが10年続くコンサルタントの教科書

年間報酬3000万円超えが10年続くコンサルタントの教科書

 

 弁護士兼コンサルとしてツイッターでも人気の中尾慎吾先生もお勧めされていた本です。価格の決定をクライアントに委ねるのではなく自分でアピールすること、そして何の職業あるいサービスと比較して自分を高く売るかという視点は目から鱗でした。漫然と業務をこなしていくのではなく、自分という商品をいかにブランディングして価値をつけていくかを常に考えなければならないと感じました。

 

 

 

 

 

【書籍紹介】相続法改正のポイントと実務への影響

 

相続法改正のポイントと実務への影響

相続法改正のポイントと実務への影響

 

 

先日成立した改正相続法(民法改正だけでなく、家事事件手続法改正、新法である遺言書保管法も含む)は、遺言・相続実務に多大なインパクトがあります。個人的には、債権法改正よりも影響は大きいのではないかと思います。

配偶者居住権の創設、遺留分の金銭請求権化、相続人の配偶者等の非相続人による特別寄与料制度の創設等、従来の相続法制が大きく変わることになります。

 

これだけの大改正であるのでボリュームも多く理解することも一苦労です。本書は、弁護士・学者が関わり、改正部分の解説はもちろん、改正法が及ぼす実務上の諸論点についても掘り下げており大変参考になります。

遺留分の金銭請求権化が事業承継に及ぼす影響についての解説は大いに勉強になりました。

 

改正法に関して真っ先に参照することになりそうです。

 

【書籍紹介】「労働者のメンタルヘルスと法」

三柴丈典「労働者のメンタルヘルス情報と法」(法律文化社

 

 企業がメンタルヘルス情報を取得、保管、利用、第三者提供する場合について、個人情報保護法・プライバシーとの関係で詳細に分析しています。個人情報保護偏重ではなく、推定的同意や正当事由等を駆使して柔軟な解釈を示しているのが特徴的です。

 

分かりやすい模範解答を出してくれているわけではありませんが、企業が従業員情報とどのように向き合い、取り扱うべきかを検討する上では大いに参考になるのではないでしょうか。

【書籍紹介】「建設業法による下請代金回収の理論・実務と書式」

 

 

建設業法による下請代金回収の理論・実務と書式

建設業法による下請代金回収の理論・実務と書式

 

 

 

 タイトル通り、建設業法による下請代金回収のテーマを深掘りしています。

  建設業の下請代金不払については、下請法では適用除外であり、建設業法が適用されます。ただ、どのような条文をどのように使えるのか、また救済を求めるためにどこに(国土交通省都道府県、公正取引委員会)申入れをすればよいのかが非常に分かりづらいです。

 

  本書は建設業法のうち下請代金回収と関連する条文を逐条解説するとともに、典型的な場面ごとの請求書や申立書の書式を豊富に盛り込んでおり、極めて有用です。建設業者の下請代金回収の案件を受任する場合はもちろん、請求を受ける元請建設業者の立場からも必携といえそうです。