説明・アドバイスの仕方についての雑感
久しぶりのブログ更新です・・・(昨年のLegal AC以来)。
Twitterで相互フォローさせていただいているdtkさんとくまったさん、更には経文緯武さんのスペース(萌渋スペース)が、毎回盛況ですね。
前回5月30日(?)のスペースは、残念ながら所要のため参加ができなかったのですが、私のリクエストを拾ってくださり、しかもそれをブログにまとめていただいていました。
次のお題というか、お聞きしたいのは、法務からみて説明・アドバイス上手な弁護士と下手な弁護士の違いですかね。
— 若手弁 (@wakateben) 2022年5月17日
依頼側の法務として、こんなメールの書き方は困る、あるいはこんな工夫がされていると助かるといったような(既に取り上げられていたらすみません)#萌渋スペース
私のふとした思い付きを取り上げていただいただけでも恐縮なのに、ブログでこのように緻密・体系的に整理までしていただき、大変嬉しいです!
法務の立場でのご経験や知見を踏まえた濃密な内容で、何度も読んで参考にしたい内容です。弁護士にとって必読の記事といえるでしょう!
特に、以下のご指摘には、目から鱗が落ちたり、耳が痛くドキッとさせられたりしました。
「外部の弁護士さんが返すべき助言は、依頼者にとって、次の行動につなげやすいものであることが望ましいはず」
「依頼前に想定されている『シナリオ』を把握する・・・そのような『サプライズ』の可能性があるのであれば、早めに示唆する方が良いのではないかと考える」
「可能であれば、法律面からの『お薦め』も、根拠と共に示した方が良いように思う」
「リスクは、ある・なしに加えて程度も示すべき」
「留保は、読みようによっては、依頼者に向かって『あなたを信用していない』とも読めてしまう。従って、そのつけ方には慎重になる方が良いだろうし、ここは事務所の巧拙が出るところだろうと感じる」
「結局どうなったか。正味どうなったかも把握しておくと、把握した時点で適時に助言することで、更なるトラブルの火種を消すことにつながるかもしれない」
私自身、依頼者(事業者を前提)からの相談に対する回答やアドバイスについて、何か体系だったノウハウや豊富な経験があるわけではないのですが、dtkさんの記事を踏まえ、改めて大事だと感じたことを書いてみようと思います(私ができているという意味ではなく、大いなる自戒を込めています)。
依頼の趣旨を十分に理解する
ここはdtkさんも「問いを理解する」と書かれていることなのですが、基本中の基本でありながら決して簡単ではないと感じています(むしろ難しい)。
前提として理解しなければならないのは、事実関係や問題点、尋ねたいことを文章で正確に伝えるということは、かなりのハードルがあるということでしょう。特に、日常的に大量の文章を読んだり書いたりする人でない場合、ご自身の中での聞きたいこととと、実際の文章の表現にずれが生じることはよくあることです。
メールで届いた質問の文章が何度読んでも理解ができず、電話したところ、即座に理解ができたという経験は何度もあります。
「相談内容を正確に理解できているか」という疑いは、常に持っておくことが必要なのでしょうね。
リスクの記載の仕方
契約書のレビューが典型的でしょうが、リスクをどの程度記載するかは常に悩ましい問題です。
私の場合、「リスク高:修正・削除が必須な条項」、「リスク中:できれば修正・削除が望ましい条項」、「リスク低:修正・削除の必要がないか乏しい」という形で、条項ごとのリスクの程度を一覧で分かるように工夫したりしています(すべての契約書レビューではなく、ある程度「重め」のレビューについてですが)。
ただ、ここでいうリスクが「高い」「低い」という判断根拠は何かということを突き詰めたら、私の主観にしかすぎないことにもなり、どのように評価するのかは常に悩むところではあります。
留保のつけ方
dtkさんの「留保は、読みようによっては、依頼者に向かって『あなたを信用していない』とも読めてしまう。従って、そのつけ方には慎重になる方が良いだろうし、ここは事務所の巧拙が出るところだろうと感じる」というご指摘は非常に耳が痛いところです・・・。
弁護士としては、どうしても「言い切り」を回避したいという心理があり、留保をつけてしまうのは避けられないのですが、どこまでそれを前面に出すかという点は常に悩むところですね。
私自身の工夫としては、アドバイス内容をメモやレポートの形で作成する際には、留保は本文部分ではなく、脚注や※をつけた箇所に記載して、文章の流れが阻害されないように意識はしています。ただ、この脚注や※という点も、あまりに分かりづらいと説明不十分ということになりかねないし、多用すると結局はdtkさんご指摘のように「あなたを信用していない」というメッセージを与えかねないところもあります・・・
また、文書(メールも含む)の形だとどうしても保守的な記載になってしまいがちなところではあるのですが、文書を送った後に電話あるいは面談をして、ニュアンスを分かりやすく伝える、という工夫もあり得るところかなと思います。
色々と書き出してみましたが、改めて説明・アドバイスの仕方は奥深く、難しいということを感じました。
私自身、よりよい方法について研鑽を積んでいきたいと思いますので、「こんな方法がよい」といった情報があれば是非教えていただければ嬉しいです。