ITサービスの利用規約や契約書作成にあたって役立つ法律書
2022年ももうすぐ終わりですね。
今年も個人情報保護法や特商法等、様々な改正があり、対応に苦労されたという企業も多いのではないでしょうか。
今年はITサービス関係の利用規約やプライバシーポリシー作成やレビューのご依頼が複数件ありました。
その都度様々な文献を調べたりしたのですが、そのうち特に参考になると思われる文献を紹介します。
古川昌平・上原拓也・小林直弥 「BtoC Eコマース実務対応」
NBLの連載を書籍化したものです。
Eコマースビジネスにまつわる法律問題を幅広く、かつ、緻密に検討しているところがポイントで、タイトルは「BtoC・・・」となっていますが、BtoBのサービスを運営している(あるいは運営を検討している)事業者にとっても大変有用です。
特に、利用規約でよく出てくる条項ごとに、問題となり得る法的論点、関連する裁判例を挙げながら、実務上どのような対応をすればよいのか、踏み込んだアドバイスがされているのはありがたいです。
ITビジネスに関連する幅広い法規制や論点を全て一からリサーチして対応するとなると膨大な手間と労力がかかります。本書は、そのようなリサーチや実務対応の心強いガイドとなるでしょう。
増田雅史・杉浦健司・橋詰卓司「新アプリ法務ハンドブック」
※この本は執筆者の方からご恵贈いただいています。ただ、以下に述べるレビューは、実際に本の内容を読んだ上で私自身が感じたことを述べています。
アプリ開発にあたっての法務問題と対応を解説しています。メインターゲットはアプリ開発に携わる事業者ということでしょうが、それにとどまらずITサービスに携わっている業者や法務関係者にとって非常に有益な本と思います。
まず圧倒されるのは取り扱っているテーマの広さと深さです。
知的財産権(著作権、特許権、商標権等)、個人情報保護法、特定商取引法、資金決済法、景品表示法、電気通信事業法、取引DPF法と、アプリ法務において関連する法律を幅広く取り上げています。
しかも、単なる条文の説明や問題点の指摘だけではなく、事業者としてどのような対応をすべきかという現場目線での解説が徹底されています。例えば、未成年取り消しを主張された場合に、契約を有効に成立させ、取り消し請求を受けるリスクを最小化する方法として様々な工夫や手段が解説されています(p215)。
また、文例のサンプルも掲載しており、実際にどのような記載をすればよいかイメージできるようになっており、至れり尽くせりといえるでしょう。
白石和泰他「プライバシーポリシー作成のポイント」
その名の通り、プライバシーポリシーを徹底的に掘り下げた本です。
プライバシーポリシーとは何か、なぜ必要なのかといったそもそも論から始まり、個人情報保護法とプライバシーポリシーとの関係について解説しつつ、サンプルまで掲載してくれています。
個人情報保護法関係の規律だけではなく、実務上はよく問題となるグーグルアナリティクスに対応したポリシーの例まで記載されており、かゆいところに手が届く内容となっています。
改めて、プライバシーポリシーの意義や目的、法的な規律を意識し、外してはならないポイントは押さえつつも自社サービスに対応した適切な内容となっているか、常に検討しなければならないことを痛感させられました。
改めて、ご多忙のところ、多大な時間と労力をかけて実務上有用な本を執筆いただいた著者、編集者、出版社の皆様に感謝です。
来年も良書と出会えることを楽しみにしています。