若手弁護士の情報法ブログ

某都市圏で開業している若手弁護士が日々の業務やニュースで感じたこと、業務において役に立つ書籍の紹介等を記していきます。情報法・パーソナルデータ関係の投稿が多いです。

【書評】堀鉄平「弁護士が実践する 不動産投資の法的知識・戦略とリスクマネジメント」

 

弁護士が実践する 不動産投資の法的知識・戦略とリスクマネジメント

弁護士が実践する 不動産投資の法的知識・戦略とリスクマネジメント

 

弁護士法人の代表を務めながら、不動産投資家、格闘家の活動もしている堀鉄平弁護士が執筆された本です。

弁護士法人の代表という重責を担いながら、不動産投資において6年間で54億円の投資に対して25億円の売却益を獲得した(17頁)というのはすごい・・・。

 

本書では、そのような堀弁護士の経験やノウハウを踏まえ、不動産投資において法律知識をいかに活用していくかという実践方法が惜しみもなく解説されています。

 

弁護士が執筆した不動産関係の法律書というと、民法借地借家法宅建業法といった関係法令を個別に解説するというスタイルが多いと思います。しかし、本書は、ただ法律や判例を解説するというスタイルではなく、不動産投資において物件の価値を向上させて利益を上げるために、オーナーに有利な特約を付したり法が認める制度を活用していくという視点が貫かれています。

そこには、トラブルが起こった段階で相談を受け対応していくといった従来型の弁護士業務とは全く異なり、積極的に法を駆使して不動産投資という一種のゲームを有利に展開していくという発想が見られます。

 

特に筆者の凄さを実感するのが第5章のコンサル事例紹介です。これは、実際の案件において筆者が相談を受けた対応をして解決に至った案件を紹介するものです。

詳しくは是非本書で直接ご確認いただきたいのですが、例えば、立ち退きを円滑に進めるために策定された交渉スキーム、顧客の自社ビルを売却するにあたり売却金額を挙げるためのなされた工夫等が掲載されています。 従来型の弁護士業務でありがちな法的処理の枠内を超えた、まさに経営コンサルともいうべき工夫され洗練された手法にはただ脱帽しかありません。

 

巻末には、筆者作成のオリジナルの賃貸借契約書の雛型も掲載するという豪華なおまけもついています。

 

筆者のように不動産投資を自ら行って成功するというのは極めて難しいと思うのですが、それは抜きにしても、従来の弁護士業務の枠を超えて、法というツールを駆使して不動産の価値向上に寄与するという視点を持つ上で非常に有用です。