情報ネットワーク法学会研究大会・雑感
情報ネットワーク法学会・第20回研究大会に参加しました。
第20回情報ネットワーク法学会研究大会 (in-law.jp)
本日報告をお聞きしたのは、佃 貴弘「信認義務に依拠したプライバシーの再構築
―専門家責任に基づく義務論として―」です。
大変興味深い内容だったので、備忘録もかねて気になった点をメモで残しておきます。
報告の内容としては、アメリカの法学者ジャック・バルキンの情報受認者論をベースとして、日本法の文脈でプライバシー保護の構成を試みるというものでした。
特に印象に残ったものが、個人(プライバシー保護の対象となる者)と直接契約関係を持たずに適法に情報を取得した事業者が、当該個人のプライバシー保護の義務を負う法的根拠として、情報受認者としての信認義務を持ち出すというものです。
契約上の義務違反という構成では、このケースについて適切な対処が難しいところであり、契約の有無とは別の次元で信認義務を設定するというアプローチには大変興味がわきました。
まだ検討すべき課題は多いということで、今後もこの議論が発展・深化していくことが予想されますが、このテーマについては関心を持って注視していきたいと思います。
関連する文献として、本報告でも挙げられていた以下のものは読んでおこうと思いました。
・斉藤邦史「プライバシーにおける『自律』と『信頼』」情報通信政策研究 3 巻 1 号(2019)73 頁
・曽我部真裕・山本龍彦「【誌上対談】自己情報コントロール権をめぐって」情報法制研究 7 号(2020)128 頁