【書評】「歴史に残る外交三賢人‐ビスマルク、タレーラン、ドゴール」
「世界史」と「外交」。このテーマにとても興味があります。
政治や外交についての素養はありませんが、交渉を扱うという点で弁護士業務と共通している部分もあり、かねてから関心がありました。
しかも、外交交渉の達人として世界史に残る人物として、ビスマルクやタレーランのことはかねてから勉強したいと思っていたので、本書を書店で見つけたときにすぐに購入をしました。
著者は長年アメリカに在住しているライター。書籍からうかがえる思想としては、日本も核武装して自衛すべきというもののようです。
ビスマルクがロシア遠征の愚を述べていた点について、特に印象的です。
ロシア軍を叩きのめして最も完璧な戦勝を成し遂げたとしても、そんな”完璧な戦勝”は何の役にも立たない。ロシア帝国は巨大であり、ドイツ軍がすべて占領して破壊できる国ではない。しかもロシアの冬は長くて過酷だ。・・・そもそも「戦争に勝つ」ということと、その戦争の後に「政治的に有利な立場を確保する」ということは、まったく別のことである(190頁)。
ナポレオンやヒトラーがロシア遠征をして大失敗したことをみても、このビスマルクの冷静な状況分析と判断には驚かされます。
また、タレーランは、裏切りを繰り返し、また本音を言わないなど、人間として危険な部分がある人物です。
しかし、ナポレオン戦争の敗北の後、敗戦国となったフランスにおいて、列強からその立場を守ったという離れ業で母国を救ったという点ではまぎれもない傑物です。
弁護士業務において、非常に厳しい状況での対応を余儀なくされる案件や場面ということはあります。
もちろん、タレーランの離れ業を簡単に実行できるものではありませんが、どんな不利な状況でも、何とか突破口を見つけて切り抜ける方法を常に考える姿勢の大事さを改めて感じました。
複雑な世界情勢における外交とはどうあるべきかを考える本としてとても面白かったです。