2020年に読んだもので面白かった本(法律書以外)
コロナに振り回された2020年ももうすぐ終わりですね。
緊急事態宣言の影響で在宅勤務が多かったこともあり、今年は例年以上に本を読んだように思います。
備忘も兼ねて今年読んだ本の中で面白かったものを紹介していきます。
1 カミュ「ペスト」
おそらくこのコロナ禍がなければ手に取ることはなかったと思いますが、非常に面白かったです。
アルジェリアにある港町のオランで、突如としてペストが大流行し、医師や新聞記者、司祭、官吏といった様々な身分・立場の者達がペストにどう対処していくのかを描く群像劇です。
ペストという不条理な存在を通じて、人間はどうあるべきか、尊厳のある生き方とは何かを考えさせられました。
2 読書猿「独学大全」
博覧強記の読書猿さんが、独学をテーマにその技法を徹底的に掘り下げた本です。
巷にあふれている、フレームワークやマニュアルを簡単にまとめたものとは全く異なり、先人達の人生や業績にも触れながら、学びとは何か、どう学べばよいのかについて、読書猿さんの膨大な読書量や知識に裏打ちされた解説が魅力です。
3 「新型コロナ対応・民間臨時調査会 調査・検証報告書」
新型コロナウイルスについての政府の政策や対応について、シンクタンクが調査を行ってまとめた報告書です。政府支持あるいは批判の立場ではなく、比較的中立的な視点で、対応のよかった点と反省すべき点を冷静に分析しています。
とかく印象的なのが、検証にあたって用いるデータの多さや多様さです。
感情論や精神論で論じてしまいがちなところですが、データを用いた客観的かつ冷静な
議論がいかに重要かという点を改めて思いました。
4 沼田やすひろ「『おもしろい』映画と『つまらない』映画の見分け方」
タイトル通りの本です。鑑賞して満足感が高い映画、消化不良感やモヤモヤ感が残る映画というものがありますが、本書はそのよう認識を見事に可視化し、おもしろいと感じた映画にはストーリー構成にどのような工夫がされているかをわかりやすく解説しています。「千と千尋の神隠し」がいかにストーリー展開として完璧だったかという点の解説は腑に落ちました。
5 鹿島茂「ナポレオン フーシェ タレーラン 情念戦争」
フランス革命の時代に活躍したナポレオン、フーシェ、タレーランの3名を主人公に、それぞれの並外れた情念にスポットライトを当てて歴史の流れを解説しています。
ナポレオンは熱狂、フーシェは陰謀、タレーランは移り気の情念をそれぞれ備え、激動の時代にあって各々がその情念を存分に発揮したという分析で、その切り口の面白さとテンポのよさで、比較的厚い本ですが、あっという間に読んでしまいました。
6 フランクル「夜と霧」
Twitterで相互フォローさせていただいている「ちくわ」さんがおすすめされていた本です。ナチスドイツによる強制収容所での壮絶な体験を、精神科医である著者の専門分野を踏まえて分析しています。
非人間的な扱い、あまりに過酷・劣悪な労働、多数の仲間の死といった、まさに地獄のような環境下にありながら、非常に冷静で淡々とした語り口がかえってその恐ろしさを浮き彫りにしています。
どんな環境にあっても人間の尊厳を保つことの意味を考えさせられる本です。