決定の木と法務
先日、ツイッターでのご縁で、@syobon _nu22さんと「数理法務概論」をテーマに意見交換させていただきました。
数理法務概論 -- Analytical Methods for Lawyers
- 作者: ハウェル・ジャクソン,ルイ・キャプロー,スティーブン・シャベル,キップ・ビスクシィ,デビッド・コープ,神田秀樹,草野耕一
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2014/03/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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色々と議論させていただく中で、第1章の意思決定分析で紹介されている決定の木(デシジョンツリー)は、法務においても有用なのではないかと感じました。
顧客企業に対して法的な問題点や見通しを説明する際の資料としては、どうしても文字がびっしり書かれた緻密なメモになりがちです。もちろん、正確性を期す必要があるし複雑な内容を説明するためにはある程度長文になるのは避け難いと思います。
ただ、顧客企業にとって法律用語が羅列された文字だけのペーパーというのは読むのも苦痛ということが多いでしょう。顧客企業にとっては重要な意思決定(訴訟するかどうか、和解するか、契約を締結するか等)をするにあたっての判断材料を得るために相談していることが多いでしょう。
それが、難解な法律論だけで、それが意思決定にどのように使えるのかを教えてくれなければ意味がないことになります。
数理法務概論で紹介されていた決定の木は、考えうる選択肢ごとに得られる利得とその確率を掛け合わせて期待値を設定し、最も期待値の高い選択肢をあぶり出すというものです。このツールをうまく使えば、法律の専門家ではない企業にとっても理解がしやすいのではないかと思います。
もちろん、決定の木は万能ではなく限界やリスクもあります。訴訟した場合に得られる金額の確率を出すということ自体、一種のフィクションであり、その数字が一人歩きする危険もあります。
ただ、大事なのは数字を出すこと自体ではなく、決定の木を作成する過程で顧客企業と認識を共有し、納得度の高い形で選択肢を選ぶところにあるのではないかと思っています。
説明のためのツールの一つという位置づけで、決定の木を活用してみることは検討の価値があるのではないでしょうか。