【書籍紹介】松尾剛行、山田悠一郎「最新判例にみるインターネット上の名誉毀損の理論と実務(第2版)」
最新判例にみるインターネット上の名誉毀損の理論と実務 第2版 (勁草法律実務シリーズ)
- 作者: 松尾剛行,山田悠一郎
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 2019/02/28
- メディア: 単行本
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インターネット、特にSNSの発達によって誰しもが気軽に意見や情報を発信できるようになり、有益な情報を容易に入手できることの恩恵については改めて述べるまでもありません。しかし、ネットゆえの手軽さ、拡散しやすさの副作用として、人格攻撃を伴う過激な投稿や、事実無根の悪質なデマも盛んになっており、この点についての対応が必要です。
弁護士として相談を受けることがあるのはもちろん、自分自身が加害者あるいは被害者になってもおかしくはありません。そのためにも、インターネットという場での表現の特徴と対策について十分理解しておく必要があります。
本書は、超人的なペースで良書を量産される松尾先生と、山田悠一郎先生(判事補、弁護士職務経験に基づき弁護士登録中)が加わって執筆されたものです。それにしても、松尾先生は2018年末に「AI・HRテック対応 人事労務情報管理の法律実務」を執筆されたばかり・・・実務をこなしながら膨大な判例・文献をまとめて次々に執筆するという離れ業には驚嘆しかありません汗
本書には以下のような特徴があります。
・膨大な裁判例を収集・分析した結果をもとに、問題点や検討すべき項目を緻密に分解して解説
→これにより、自分が相談を受けた事案について、手がかかりをつかみ、類似裁判例を調べることができ、リファレンスツールとして優れています。
・実践編として、相談を受けた場合にどのように対応すべきか、想定事例を複数用意し、それぞれの当事者に対して行うべきアドバイス、中立の立場からの評価が丁寧に解説されており、重層的な理解ができます。
→例えば、ケース9総合事案3では、表現者について名誉毀損の法的責任は負わない可能性が高いとしつつ、今後も同様の表現を続けると批判の対象となりかねないから、任意に削除するかも含めて検討すべきとアドバイされています。単に法的責任の有無だけに終始するのではなく、紛争の根本的な解決あるいはリスク回避の観点から実務的に有益なアドバイスがされており、ネット上のふるまいを考えるうえで大変参考になります。
加害者側・被害者側問わず、名誉毀損に関する相談が来たときには真っ先に参照すべき書籍となりそうです。