若手弁護士の情報法ブログ

某都市圏で開業している若手弁護士が日々の業務やニュースで感じたこと、業務において役に立つ書籍の紹介等を記していきます。情報法・パーソナルデータ関係の投稿が多いです。

【書籍紹介】谷口学「会計参謀」:生きた会計を学ぶことができる良書

谷口学「会計参謀‐会計を戦略的に活用する‐」

会計参謀-会計を戦略に活用する-

会計参謀-会計を戦略に活用する-

 

 

仕事の上で決算書を見る機会は多く、会計に関する知識を備えておくことは必須です。色々と本を読みある程度の知識は得たつもりですが、決算書に記載されている会計指標が実際どのような意味を持つのか、十分なイメージを持つことがなかなかできませんでした。

本書は、 公認会計士である著者が、会計というツールを使って企業経営にどのように生かしていくのかを解説している本です。

本書の特徴は、会計指標や数値の細かい説明に終始するのではなく、事業ポートフォリオ戦略、M&Aにおける企業価値評価、予算管理、投資等の意思決定といった、企業経営をする上で問題となる様々な場面において会計がどのように役立つかという、「生きた会計」を示してくれている点です。

 

会計というと、どうしても細かい指標や専門的な用語をイメージしがちで、苦手意識がありました。しかし、本書を読んだことで、会計というものの位置づけ、経営戦略とのかかわりについてかなり具体的なイメージを持つことができました。

比喩を用いた説明が巧みで、どんどん読み進めていくことができます。例えば、以下の一文は非常に分かり易かったです。

 

会計数値とは、船の航行に例えれば、進む方向を指し示す羅針盤であり、風速計であり、燃料計である。さまざまな計器が情報をコックピットに映し出し、航行の目的に合った最善手を打つ判断根拠となる(「はじめに」より)。 

 

また、事業評価指標のところでは、①売上高(高度成長期においては絶対金額としての売上が重視された)→②売上高利益率(事業の規模ではなくビジネスモデルやコスト構造を検証し事業の利益率を評価する必要が生じた)→③総資本利益率(直接金融の拡大により、投資効率が重視されるようになった)→④株主資本利益率(株主の立場から、総資産ではなく株主が拠出した株主資本がどのくらい有効に運用されているかを評価する必要が生じた)というように、時代の流れによって重視すべき評価指標が変化していった過程を分かり易く解説しています。これまで、これらの評価指標の関係性はよく理解できていませんでしたが、この説明によってはっきりとイメージできるようになりました。

 

本書を読んだことで、改めて会計の奥深さと面白さを知ることができました。会計について基本的な知識はあるものの、苦手意識があるという方は是非一読をしていただきたい良書です。