若手弁護士の情報法ブログ

某都市圏で開業している若手弁護士が日々の業務やニュースで感じたこと、業務において役に立つ書籍の紹介等を記していきます。情報法・パーソナルデータ関係の投稿が多いです。

書籍紹介「実務相続関係訴訟 遺産分割の前提問題等に係る民事訴訟実務マニュアル」:相続事件を扱う際に有用

田村洋三他編「実務相続関係訴訟 遺産分割の前提問題等に係る民事訴訟実務マニュアル」(日本加除出版株式会社)

実務 相続関係訴訟 遺産分割の前提問題等に係る民事訴訟実務マニュアル

実務 相続関係訴訟 遺産分割の前提問題等に係る民事訴訟実務マニュアル

  • 作者: 田村洋三,小圷眞史,北野俊光,雨宮則夫,秋武憲一,浅香紀久雄,松本光一郎
  • 出版社/メーカー: 日本加除出版
  • 発売日: 2016/06/03
  • メディア: 単行本
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 相続が絡む案件は法的に複雑で錯綜しているものが多いです。遺産を誰が取得すべきかという問題は最終的には遺産分割審判で決着がつくことになりますが、その遺産分割に辿りつく以前の段階で激しい争いが生じることも多く、その場合は遺産分割の前に別途訴訟等で処理をしなければなりません。

本書はその遺産分割の前提問題等に関して類型ごとにまとめたものです。遺産分割の前提といってもその種類は多く、紛争の対象も相続人の範囲、遺産の範囲、遺言の効力と様々です。また、遺産分割の「前提」ではありませんが(つまりこの点が確定しなくても遺産分割そのものは可能)、遺産分割と密接な関係があり別途訴訟で解決しなければならない問題として、遺留分減殺、葬儀費用、相続財産の管理費用等が争われるものもあります。

本書は、これらの遺産分割の前提問題等の各類型ごとに、訴訟においてよく見られる請求原因、抗弁、再抗弁という形で整理をしてくれています。そのため、自分が原告側・被告側どちらになった場合でも、自身の主張を認めさせるために必要な主張や要件事実が整理され、また相手方の反論も予想することができます。

 

相続事件においては遺産分割だけでなく、その前提問題等についても対応することが求められます。相続事件を取り扱う際にはとても役立つでしょう。