若手弁護士のつぶやき

某都市圏で開業している若手弁護士が日々の業務やニュースで感じたこと、業務において役に立つ書籍の紹介等を記していきます

書籍紹介「企業労働法実務入門」:使用者側からの労働法の使い方のイロハが分かる

倉重公太朗他「企業労働法実務入門」(日本リーダーズ協会) 

企業労働法実務入門―はじめての人事労務担当者からエキスパートへ

企業労働法実務入門―はじめての人事労務担当者からエキスパートへ

 

主に企業側からの視点から、労働法は何のためにあるのか、どのような場面で使うのかを解説した本です。入門と書かれているとおり、難解な説明は極力省いており、労働法に関するテーマについて満遍なく平易に解説されています。また法律の解説だけではなく、人事組織マネジメントの基礎や社会保険・労働保険の基礎の説明もあり、これを読めば、企業側から見た人事労務の基礎を一通り学ぶことができます。

消費者事件を取り扱う際のお勧めの書籍

弁護士の業務の中で、消費者事件を扱うことはよくあります。しかし、消費者事件は分野も幅広く、特別法も複雑で処理に苦労することも少なくありません。

そこで、消費者事件を取り扱う際に手元に置いておくと便利な書籍を紹介します。

 

目次

日本弁護士連合会「消費者法講義」  

消費者法講義〔第4版〕

消費者法講義〔第4版〕

 

消費者法の全般的な理解をするための入門といえばこの一冊です。各分野について難しすぎない範囲でまとめられています。

 

 

圓山茂夫「特定商取引法の理論と実務」 

詳解 特定商取引法の理論と実務

詳解 特定商取引法の理論と実務

 

特商法の詳しい解説といえばこの本は外せません。非常に分厚くとても通読はできませんが、特商法の条文を消費者側に有利に活用する方法が具体的に書かれているので、訴訟や交渉において大いに役立ちます。

 

 

村千鶴子「誌上法学講座‐特定商取引法を学ぶ」 

誌上法学講座―特定商取引法を学ぶ

誌上法学講座―特定商取引法を学ぶ

 

 特商法は非常に重要な法律ではあるのですが、条文の文言が非常に長く難解で、条文だけ読んでもその意味を十分理解することは困難です。この本は特商法の全体像と各類型の典型例を極めてコンパクトに分かりやすく解説してくれているので、特商法のイメージを持つには最適です。

 

 

村千鶴子「誌上法学講座‐割賦販売法を学ぶ」

誌上法学講座―割賦販売法を学ぶ

誌上法学講座―割賦販売法を学ぶ

 

上記の書籍の姉妹本で、割賦販売法についてです。 消費者事件においては支払不能の抗弁等、割賦販売法の理解も不可欠ですが、この法律も特商法に負けず劣らず難解な構造をしております。この本で全体像をつかむのがいいでしょう。

 

 

福崎博孝「カード被害救済の法理と実務」

カード被害救済の法理と実務

カード被害救済の法理と実務

 

 消費者事件ではカード被害も典型的な類型です。この本ではカード被害に焦点を絞って具体的な処理の方法を詳しく解説しています。

 

 

消費者法の分野では、法改正や重要判例が頻繁に出されるので、上記で挙げた書籍を参照しつつ、常に最新の情報にもあたって知識をアップデートする必要があるでしょう。

書籍紹介「障害年金というヒント」:障害年金のイロハが分かる

中井宏監修「誰も知らない最強の社会保障 障害年金というヒント」(三五館) 

誰も知らない最強の社会保障 障害年金というヒント

誰も知らない最強の社会保障 障害年金というヒント

 

障害年金の内容や申請手続、受給額等の基本について平易に解説している本です(執筆者は殆ど社労士です)。

癌やうつであっても障害年金の受給対象となる可能性があるということを本書を読んで初めて知り、本書が「最強の社会保障」と呼ぶ通り相当有用な制度であることに軽い衝撃を受けました。

弁護士の依頼者の中にも、癌やうつに罹患している方は決して少なくありません。そのような方に対しても、障害年金を使うことで生活を楽にすることができるかもしれないことに気づかせてくれました。

年金というとどうしても社労士の守備範囲で、弁護士にとっては関わりがないと思われがちですが(私自身もそのように思っていました)、依頼者の役に立つという観点からすれば障害年金のことも常に念頭に置かなければならないということですね。

 

年金についての解説本というと難解で読みづらい本をイメージしますが、本書はイラストも豊富に使用して全くの初心者であっても理解しやすい平易な説明をしていますので、障害年金について基本的なイメージを身に付けることができます。

 

 

書籍紹介「実務相続関係訴訟 遺産分割の前提問題等に係る民事訴訟実務マニュアル」:相続事件を扱う際に有用

田村洋三他編「実務相続関係訴訟 遺産分割の前提問題等に係る民事訴訟実務マニュアル」(日本加除出版株式会社)

実務 相続関係訴訟 遺産分割の前提問題等に係る民事訴訟実務マニュアル

実務 相続関係訴訟 遺産分割の前提問題等に係る民事訴訟実務マニュアル

  • 作者: 田村洋三,小圷眞史,北野俊光,雨宮則夫,秋武憲一,浅香紀久雄,松本光一郎
  • 出版社/メーカー: 日本加除出版
  • 発売日: 2016/06/03
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る
 

 相続が絡む案件は法的に複雑で錯綜しているものが多いです。遺産を誰が取得すべきかという問題は最終的には遺産分割審判で決着がつくことになりますが、その遺産分割に辿りつく以前の段階で激しい争いが生じることも多く、その場合は遺産分割の前に別途訴訟等で処理をしなければなりません。

本書はその遺産分割の前提問題等に関して類型ごとにまとめたものです。遺産分割の前提といってもその種類は多く、紛争の対象も相続人の範囲、遺産の範囲、遺言の効力と様々です。また、遺産分割の「前提」ではありませんが(つまりこの点が確定しなくても遺産分割そのものは可能)、遺産分割と密接な関係があり別途訴訟で解決しなければならない問題として、遺留分減殺、葬儀費用、相続財産の管理費用等が争われるものもあります。

本書は、これらの遺産分割の前提問題等の各類型ごとに、訴訟においてよく見られる請求原因、抗弁、再抗弁という形で整理をしてくれています。そのため、自分が原告側・被告側どちらになった場合でも、自身の主張を認めさせるために必要な主張や要件事実が整理され、また相手方の反論も予想することができます。

 

相続事件においては遺産分割だけでなく、その前提問題等についても対応することが求められます。相続事件を取り扱う際にはとても役立つでしょう。

冤罪を生み出す構造~1つのストーリーに固執することの怖さ~

 こちらの記事が話題になっています。

恐怖!地方の人気アナが窃盗犯にデッチ上げられるまでの一部始終(週刊現代) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)

 

事案の概要は、アナウンサーだった方が、銀行を訪れた際に客が置き忘れた現金入りの封筒の中から現金を盗んだという窃盗の嫌疑で逮捕・勾留され、一審・二審とも有罪判決が下ったものの、最高裁で逆転無罪判決となったものです。

この記事の中では、自白を強要される、捜査機関側のストーリーがあらかじめ決まっておりいくら弁解しても全く聞き入れられない等の話が出ています。

 

私は刑事弁護専門というほどではありませんが、常時刑事弁護案件を抱えており、冤罪が疑われる事件にも携わったことがあります。その経験の中で感じたことというと、冤罪事件においては、警察・検察がいったん決めたストーリーで間違いないとして突っ走り、そのストーリーと整合しない事実や証拠は無視するという傾向があるように思います。

もちろん、捜査の道筋を決めるためには一定のストーリーを立てる必要があるのでストーリーを作ること自体が悪いわけではありません。ただ、そのストーリーはあくまでも仮説であり、新たな証拠によって修正あるいは変更されるべきものですし、場合によっては複数のストーリーも立てておくべきです。しかし、そのような柔軟な軌道修正をすることなく最初に立てたストーリーに固執し、そのストーリーに都合のよい証拠だけを選別し、都合の悪い証拠を無視する場合に冤罪が引き起こされることになります。

 

刑事事件に限ったことではありませんが、最初の見立ては常に変動し得るものであることを認識し、情勢の変化により臨機応変に軌道修正をするという柔軟な考えをもって対応することが重要であると改めて感じます。

書籍紹介 「文書提出命令の理論と実務」:文書提出命令に関する書籍の決定版

山本和彦他編集「文書提出命令の理論と実務」(民事法研究会)

文書提出命令の理論と実務

文書提出命令の理論と実務

 

学者、弁護士、裁判官らの共著です。文書提出命令の理論面や判例準則といった一般論の説明はもちろん、各訴訟類型や文書の種類についても判例を踏まえた詳しい解説がされています。特に訴訟類型は、文書提出命令が問題となりやすい知的財産訴訟、医療訴訟、労働訴訟、交通事故訴訟、租税訴訟に分けて説明がされています。

巻末に文書提出命令に関する裁判例が一覧としてまとめられており(収録数は第2版では155件)、関連する裁判例を調べたいときに非常に便利です。

 

文書提出命令に関して必要な情報はほぼ網羅されているといえます。この種の事件を取り扱う際の必携書でしょう。

 

書籍紹介 「弁護士が悩む不動産に関する法律相談」:不動産専門弁護士の処理の仕方を学べる

第一東京弁護士会法律相談運営委員会「実例弁護士が悩む不動産に関する法律相談」(日本加除出版) 

実例 弁護士が悩む不動産に関する法律相談―専門弁護士による実践的解決のノウハウ

実例 弁護士が悩む不動産に関する法律相談―専門弁護士による実践的解決のノウハウ

 

不動産に関する事件を多く取り合っている弁護士が経験した、売買、賃貸借、倒産処理、不動産執行、境界、相続等の様々な分野に関する事件の処理の仕方が書かれています。

時系列に沿って受任時から事件解決までの流れが簡潔にまとめられているので、それを追体験することで、同様の事案を受任した際にどのように対応すればよいかがイメージできます。執筆者らによる座談会も収録されており、不動産の事件に精通した弁護士がどのような考えで業務を行っているかを知ることができる点でも有益です。

不動産の事案を取り扱う際には大いに参考になるでしょう。